「この求人票、なんか固くない?」問題
総務や人事を兼任していると、ある日突然こう言われる。
「来月から営業を1人増やしたいから、求人票お願いね」
そこで求人サイトの管理画面を開くものの、仕事内容の欄で手が止まる。書き出しはいつも「弊社は○○年に設立し……」から始まる会社紹介。職場の雰囲気を伝えたいのに、出てくる言葉は「アットホームな職場です」「風通しの良い社風」ばかり。
自分でも「これ、どこの会社でも書いてあるやつだな」と思いながら、締め切りに追われてそのまま公開。結果、応募が来ない。
実はこの「求人票の文章づくり」、AIがめちゃくちゃ得意な分野だった。
なぜ求人票は書きにくいのか
そもそも求人票が書きにくい理由は、こんな感じだと思う。
- 自社の魅力を客観的に言語化するのが難しい(中にいると当たり前すぎて気づかない)
- 求職者目線で書く必要があるのに、つい会社目線になってしまう
- 法的にNGな表現(年齢制限、性別限定など)を避けなきゃいけない
- 他社の求人と差別化したいけど、どう書けばいいかわからない
つまり「マーケティング」と「コンプライアンス」と「ライティング」が同時に求められる、地味にハイレベルなタスクなのだ。
まずはAIに「たたき台」を作ってもらう
いきなり完成形を求めなくていい。まずは材料をAIに渡して、たたき台を作ってもらおう。
ChatGPTやClaudeにこんなプロンプトを送る。
「以下の条件で求人票の本文を作ってください。求職者が読んで"ここで働きたい"と思えるような文章にしてください。」
そのあとに、条件を箇条書きで伝える。
・職種:営業事務(正社員)
・仕事内容:受発注管理、見積書作成、電話対応、営業のサポート全般
・必須スキル:Excel基本操作、電話対応に抵抗がないこと
・勤務地:東京都中央区
・勤務時間:9:00〜18:00(残業月10時間程度)
・給与:月給23万〜28万円
・休日:土日祝、年間休日125日
・うちの会社の特徴:社員30名の中小企業、営業チーム5名、平均年齢32歳、服装自由、お昼に近所のランチに行く文化がある
これだけ渡せば、AIが求職者目線に変換した文章を出してくれる。「お昼に近所のランチに行く文化がある」みたいな何気ない情報が、AIの手にかかると「チームでランチに出かけることも多く、自然とコミュニケーションが取れる環境です」といった魅力的な表現に化ける。
さらに磨く:3つの追加プロンプト
たたき台ができたら、ここからが本番。以下の3つの追加プロンプトで、文章を磨いていく。
1. 差別化ポイントを聞く
「この求人票を、他社の似たような求人と比較して、差別化できるポイントはどこですか?もっと強調すべき点があれば提案してください。」
AIが「残業月10時間は業界平均より少ないので、もっと前面に出しましょう」「服装自由は求職者にとって大きな魅力なので、見出しに入れては」など、具体的なアドバイスをくれる。
2. NGワードチェックを頼む
「この求人票に、雇用対策法や男女雇用機会均等法に抵触する可能性のある表現はありますか?あれば修正案を出してください。」
「若い方歓迎」「女性が活躍中」など、うっかり書いてしまいがちな表現をAIが指摘してくれる。もちろんAIの回答を100%鵜呑みにするのではなく、最終確認は人事担当者や必要に応じて専門家にも相談しよう。それでも、下書き段階でチェックが入るだけで安心感がまるで違う。
3. 求職者視点でツッコミを入れてもらう
「あなたが転職活動中の30代事務職だとして、この求人票を読んで気になる点や、もっと知りたいと思う情報はありますか?」
これが意外と効く。「具体的にどんなシステムを使うのか知りたい」「入社後の研修はあるのか」など、書き手が見落としがちな情報の抜け漏れをAIが拾ってくれる。
実際にやってみた結果
私がこの方法を試したときの変化はこんな感じだった。
| AI活用前 | AI活用後 | |
|---|---|---|
| 作成時間 | 2〜3時間 | 30分〜1時間 |
| 書き直し回数 | 4〜5回 | 1〜2回 |
| 上司の修正指示 | 「もっと具体的に」と毎回言われる | ほぼ一発OK |
| 応募数(体感) | ぽつぽつ | 明らかに増えた |
一番大きかったのは、「何を書けばいいかわからない」という白紙の恐怖がなくなったこと。AIが出してくれたたたき台をベースに修正するほうが、ゼロから書くよりずっとラクだし、質も上がる。
注意したいこと
便利なAIだけど、求人票で使うときに気をつけたいポイントもある。
- 事実と違うことは書かない:AIは渡した情報をもとに「盛った」表現を作ることがある。残業が実際は月20時間なのに「ほぼ残業なし」と書いてしまったら、入社後のトラブルの原因になる
- 社内用語をそのまま使わない:AIに渡す情報に社内用語が入ると、そのまま求人票に出てくることがある。求職者にはわからない言葉になっていないか確認しよう
- 最終チェックは人間がやる:法的なリスクに関わる部分は、AIの出力を参考にしつつも、必ず人間が最終確認すること
まとめ
求人票の文章づくりは、AIとの相性がとても良い作業だ。
- 条件を箇条書きで渡してたたき台を作ってもらう
- 差別化・NGワード・求職者視点の3つの追加プロンプトで磨く
- 最終チェックは人間が責任を持つ
「採用の文章なんて書いたことないよ……」という事務職の方こそ、ぜひ一度試してみてほしい。AIがたたき台を作ってくれるだけで、びっくりするほどハードルが下がるから。