何が起きたか
上司宛のメールに「ご確認していただけますでしょうか」と書いて送ったら、先輩から「それ、二重敬語だよ」と指摘された。
正しくは「ご確認いただけますでしょうか」。「ご確認する」の「ご〜する」は謙譲語の形で、「いただく」も謙譲表現だから、重ねると不自然な日本語になるらしい。
……知らなかった。しかも、このまま何年も使い続けていた可能性があると思うとゾッとした。
それ以来、メールを書くたびに「この敬語で合ってるかな」と不安になるようになった。ネットで調べるにしても、検索結果がサイトごとにバラバラで余計に混乱する。
そんなとき、「AIに敬語チェックさせてみたら?」と同僚に言われて試してみた。
やってみたこと
自分が書いたビジネスメールや社内文書をAIに貼り付けて、「敬語の間違いや不自然な言い回しがあれば指摘して」と頼んでみた。
実際に投げた文章(修正前)
お疲れ様です。先日お話しさせていただいた件について、資料をお送りさせていただきます。ご確認の程よろしくお願い致します。お忙しいところ恐れ入りますが、ご不明点がございましたらお申し付けください。
自分では丁寧に書いたつもりだったけど、AIからの指摘が意外と多くて驚いた。
AIに指摘されたポイント
| 修正前 | 問題点 | 修正後 |
|---|---|---|
| お話しさせていただいた | 「させていただく」の多用 | お話しした / ご相談した |
| お送りさせていただきます | 同上。くどい印象に | お送りいたします |
| よろしくお願い致します | 「致す」は漢字だと別の意味が混ざる | よろしくお願いいたします |
| お申し付けください | 文脈的にやや堅すぎ | お気軽にお問い合わせください |
たった4行のメールから4つも指摘が出てきた。特に「させていただく」の多用は、言われてみれば確かにクドい。
3つのAIで比較してみた
せっかくなので、ChatGPT・Claude・Copilotの3つで同じ文章をチェックしてもらった。
ChatGPT(GPT-4o)
敬語の文法的な正誤を辞書的にしっかり解説してくれる印象。「二重敬語とは」「謙譲語と尊敬語の違い」など、背景知識もセットで教えてくれるので勉強になる。ただ、解説が長くなりがちで、急いでいるときはちょっと読むのが大変。
Claude
文法だけでなく文章全体のトーンやバランスも見てくれる。「この文は丁寧すぎて逆にぎこちない印象を与えるかもしれません」といった指摘があり、実務的に助かった。修正案も複数パターン出してくれることが多い。
Copilot
Wordとの連携が強みで、書きながらリアルタイムで指摘してもらえるのが便利。ただ、敬語特有の細かいニュアンスについてはChatGPTやClaudeと比べるとやや淡白な印象。日常的に軽くチェックしたい場面で使いやすい。
個人的なおすすめ使い分け
- しっかり勉強したい → ChatGPT(解説が丁寧)
- 実務で素早く直したい → Claude(修正案が実践的)
- Word作業中にサッと確認 → Copilot(リアルタイム連携)
具体的なプロンプト例
実際に使っているプロンプトをいくつか紹介する。コピペして使ってOK。
基本の敬語チェック
以下のビジネスメールの敬語や言い回しに間違い・不自然な点があれば指摘してください。
修正案もセットでお願いします。
---
(ここに自分の文章を貼る)
相手に合わせたトーン調整
以下の文章を、取引先の部長宛にふさわしいトーンに修正してください。
丁寧すぎず、かつ失礼にならないバランスでお願いします。
---
(ここに自分の文章を貼る)
やりがちミスの一覧チェック
以下の文章に「二重敬語」「させていただくの多用」「ら抜き言葉」
「い抜き言葉」「主語と述語のねじれ」がないかチェックしてください。
---
(ここに自分の文章を貼る)
やってみて気づいたこと
1. 「させていただく症候群」だった
自分の過去のメールを見返したら、1通のメールに「させていただく」が3回以上入っていることがザラだった。丁寧に書こうとするほどこの表現に頼ってしまうクセがあったらしい。AIに指摘されてから意識するようになって、今は1通につき1回以下に減った。
2. 漢字の「致す」と「いたす」は別物
「お願い致します」と書いていたけど、ビジネスマナー的には「お願いいたします」(ひらがな)が正しいらしい。漢字の「致す」は「不徳の致すところ」のように使う別の言葉で、補助動詞として使うときはひらがなが適切。これはAIに教えてもらうまで知らなかった。
3. チェック時間が激減した
以前は1通のメールの言い回しに10〜15分悩んでいたのが、AIに投げれば30秒で指摘+修正案が返ってくる。1日5通メールを書くとして、少なくとも30分は時短になっている。
4. 自分の「敬語グセ」が見える
何度もAIにチェックしてもらっていると、自分がいつも同じパターンでミスしていることに気づく。私の場合は「させていただく多用」「漢字のいたします」「一文が長すぎる」の3つがワースト3だった。クセがわかれば自分で気をつけられるので、だんだんAIの指摘が減ってくる。これが地味にうれしい。
注意点
- AIの指摘が100%正しいとは限らない。敬語のルールには諸説あるものもあるので、違和感があれば複数のAIで確認するか、信頼できるマナー本と照らし合わせよう。
- 社外秘の情報はそのまま貼らない。固有名詞や金額をダミーに置き換えてからAIに投げるクセをつけると安心。
- 最終判断は自分で。AIは文法的な正しさは得意だけど、相手との関係性や社内の空気感までは読めない。「この人にはもう少しカジュアルでいい」みたいな判断は、自分の感覚を信じよう。
まとめ
敬語チェックは、AIが本当に得意な分野のひとつだと思う。
文法ルールに基づいた指摘は人間より正確なことも多いし、何度聞いても嫌な顔をしない(ここ大事)。
「自分の敬語に自信がない」という人ほど、まずは1通のメールをAIに投げてみてほしい。思っていたより指摘が多くて一瞬凹むかもしれないけど、それは今まで気づかなかった改善ポイントが見えたということ。恥ずかしがることじゃない。
毎日のメールが少しラクに、そして少し自信を持って書けるようになる。それだけで仕事のストレスがひとつ減る。