電話が鳴るたびに胃がキュッとなる

事務職に就いて最初にぶつかる壁、それが電話応対だ。

メールやチャットなら考える時間がある。でも電話はリアルタイム。相手の名前を聞き取れなかったり、想定外の質問をされてフリーズしたり。「少々お待ちください」を何度も繰り返して、受話器の向こうでため息が聞こえた気がする——そんな経験、きっと自分だけじゃないはずだ。

研修で電話応対のマニュアルをもらったけど、A4用紙にびっしり書かれた敬語の一覧を見ても、実際の電話で頭が真っ白になったら何の役にも立たない。

そこで思いついたのが、AIに自分専用のトークスクリプトを作ってもらうこと。結果から言うと、これがものすごく効いた。

トークスクリプトって何?

コールセンターで使われている「こう聞かれたら、こう答える」という台本のことだ。

事務職の電話応対でも、よく考えるとパターンは意外と限られている

  • 担当者への取り次ぎ
  • 担当者が不在のときの対応
  • 営業電話のお断り
  • よくある問い合わせへの回答
  • クレームの一次受け

この5パターンをカバーするスクリプトがあれば、電話の8割は乗り切れる。問題は、自分でゼロから作ろうとすると「本当にこの言い回しで合ってる?」と不安になること。ここでAIの出番だ。

AIへの頼み方:プロンプトの実例

ChatGPTやClaudeに、こんなふうにお願いしてみよう。

あなたはビジネスマナーの講師です。事務職が会社の代表電話を取るときのトークスクリプトを作ってください。以下のシーンごとに、具体的なセリフを「」で示してください。 ①担当者に取り次ぐ場合 ②担当者が不在の場合(外出中・会議中・休暇中) ③営業電話をやんわり断る場合 ④製品の在庫や納期を聞かれた場合 ⑤クレームの電話を受けた場合 敬語は正確に、でもガチガチすぎず自然な表現でお願いします。

ポイントは3つ。

  1. 役割を与える(「ビジネスマナーの講師」)
  2. シーンを具体的に列挙する(自分の職場で実際にある場面を書く)
  3. トーンを指定する(「ガチガチすぎず自然」)

これだけで、AIはシーンごとに「最初の名乗り → 要件の確認 → 対応 → 締めの挨拶」という流れのスクリプトを出してくれる。

出てきたスクリプトをどう使う?

AIが作ってくれたスクリプトは、そのまま丸暗記する必要はない。大事なのは自分流にカスタマイズすることだ。

ステップ1:自社の言い回しに直す

会社によって「お電話ありがとうございます、〇〇株式会社でございます」なのか「はい、〇〇株式会社です」なのか、名乗り方は違う。AIのスクリプトをベースに、自社のルールに合わせよう。

修正したい部分があればAIにこう追加で頼める。

当社では電話の第一声を「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社、△△でございます」に統一しています。この名乗りに合わせてスクリプトを修正してください。

ステップ2:付箋サイズに要約してもらう

フルのスクリプトは練習用、実戦では付箋に貼れるくらいの短縮版が欲しい。

上のスクリプトから、電話中にチラ見できるカンペを作ってください。各シーン3行以内で、キーフレーズだけ抜き出してください。

こうすると、デスクの電話の横に貼っておけるコンパクトなメモが手に入る。

ステップ3:ロールプレイ相手になってもらう

スクリプトが完成したら、AIにお客さん役をやってもらって練習できる。

あなたはお客様役です。私が電話応対の練習をするので、いろいろな問い合わせをしてください。たまに怒っているお客様も混ぜてください。私の対応に改善点があればその都度フィードバックしてください。

これが意外と実践的で、一人でブツブツ練習するより度胸がつく。AIは何回やっても嫌な顔をしないので、気が済むまで繰り返せるのがありがたい。

実際にやってみて変わったこと

スクリプトを用意してから、電話応対に3つの変化があった。

1. 第一声で詰まらなくなった

名乗りと最初の一言が決まっていると、電話を取る瞬間の緊張がぐっと減る。スタートさえ切れれば、あとは意外と流れに乗れるものだ。

2. 「少々お待ちください」の回数が減った

不在対応や営業お断りなど、よくあるパターンの返しを覚えたことで、保留にする回数が明らかに減った。相手にとっても待たされないのはうれしいはずだ。

3. 後輩に教えやすくなった

自分が作ったスクリプトをチームで共有したら、新しく入った人の研修にそのまま使えた。「まずこのスクリプトを見て練習して」と言えるのは、教える側としてもラクだ。

注意しておきたいこと

AIが作るスクリプトは一般的なビジネスマナーに基づいているので、業界特有の言い回し社内ルールまでは知らない。必ず先輩や上司にチェックしてもらおう。

また、スクリプトはあくまで「型」だ。慣れてきたら型を離れて、自分の言葉で対応できるようになるのが理想。最初の補助輪として使うイメージが一番しっくりくる。

まとめ

電話応対の苦手意識は、「何を言えばいいかわからない」から来ていることが多い。AIに頼めば、自分の職場に合ったトークスクリプトが数分で手に入る。

  • プロンプトでシーンを具体的に伝える
  • 出力を自社ルールに合わせてカスタマイズする
  • 付箋サイズのカンペとロールプレイで実戦に備える

電話が鳴っても「大丈夫、スクリプトがある」と思えるだけで、心の余裕がまるで違う。まずは明日の朝、AIにスクリプトを1つ作ってもらうところから始めてみてほしい。