何が起きたか
4月に入って新しいメンバーが配属された。上司から「来客対応のマニュアル、ちょっと作っておいて」と頼まれた。
「ちょっと」と言われたけど、いざ作ろうとすると意外と大変だ。受付での声かけ、応接室への案内、お茶出しのタイミング、名刺の受け取り方……。自分が普段やっていることを言語化するのは思った以上に難しい。
過去のマニュアルを探したけど見つからず、結局ゼロから作ることに。Wordを開いて30分、見出ししか書けていなかった。
「これ、AIに叩き台を作ってもらえばいいのでは?」と思い立って試してみた。
なぜ来客対応マニュアルは作りにくいのか
来客対応が難しいのは、暗黙知が多すぎるからだと思う。
- お客様が来たらまず何と声をかけるか
- エレベーターではどこに立つか
- お茶はいつ出すか、コーヒーも聞くか
- 担当者が不在のときはどうするか
- お見送りはどこまでするか
ベテラン社員は体が覚えているからサッとできる。でも文章にしようとすると「あれ、これってどう説明すればいいんだろう」と詰まる。新人に「見て覚えて」と言うのも限界がある時代だ。
AIへのプロンプト例
3つのAIに同じプロンプトを投げてみた。
あなたはオフィスの総務担当です。
新入社員向けに「来客対応マニュアル」の叩き台を作ってください。
以下の場面をカバーしてください:
- 受付での第一声
- 応接室への案内
- お茶出し
- 担当者が不在・遅れる場合の対応
- お見送り
条件:
- 敬語の具体的な例文を入れる
- 新人が迷わないようにステップ形式で書く
- A4で2枚程度に収まる分量
ポイントは**「具体的な例文を入れて」と指示すること**だ。「マニュアルを作って」だけだと抽象的な内容になりがちだが、例文を求めると実務で使えるレベルになる。
3つのAIを比較してみた
ChatGPT(GPT-4o)
ステップ形式で整理されていて、全体の構成が分かりやすかった。「恐れ入りますが、お名前とご所属をお伺いしてもよろしいでしょうか」など、そのまま使える敬語例文が豊富。新人がコピーして手元に置いておけるレベルだった。
Claude
状況別の分岐(担当者不在、予約なし来客など)を丁寧にカバーしてくれた。「想定外のケースにどう対応するか」まで踏み込んでいて、実際に現場で困りそうな場面への備えが手厚い印象。文章のトーンも柔らかくて、新人が読みやすい。
Microsoft Copilot
Word上で直接編集できるのが最大のメリット。箇条書きベースで簡潔にまとまっていた。ただし敬語の例文は他2つに比べると少なめで、自分で補足する必要があった。
どれが一番使えた?
今回はClaudeの出力をベースにして、ChatGPTの敬語例文を追加する形で仕上げた。CopilotはWordとの連携が便利なので、最終的な体裁を整えるときに活躍した。
実際に仕上げるまでの流れ
AIの出力をそのまま使うのではなく、以下の手順で仕上げた。
- AIに叩き台を出力させる(5分)
- 自社のルールに合わせて修正する(15分)
- 応接室の場所、お茶の種類、内線番号など具体情報を追加
- 「弊社ではコーヒーも用意しています」のような自社固有の情報を反映
- 先輩にレビューしてもらう(10分)
- 「うちはお見送りはエレベーター前まででOK」など、暗黙のルールを拾う
- 最終版をPDF化して共有フォルダに保存(5分)
合計 約35分。ゼロから作っていたら半日はかかっていたと思う。
AIを使うときの注意点
来客対応マニュアルをAIに作らせるとき、気をつけたいことが3つある。
1. 自社ルールは自分で入れる
AIは一般的なビジネスマナーは知っているが、「うちの会社では応接室が3階と5階にある」「社長宛の来客は必ず秘書に連絡」といった固有ルールは知らない。叩き台をもらった後に、必ず自社の情報を上書きしよう。
2. 敬語は声に出して確認する
AIが生成した敬語は文法的には正しくても、実際に声に出すと不自然なことがある。「お越しいただきまして誠にありがとうございます」より「お越しいただきありがとうございます」の方が自然な場面もある。音読してチェックするのがおすすめ。
3. 完璧を目指さない
マニュアルは一度作ったら終わりではない。実際に新人が使ってみて「ここが分かりにくい」と言われたら更新すればいい。AIで素早く叩き台を作って、運用しながら育てていくのがベストだ。
まとめ
来客対応マニュアルのように「暗黙知を文章化する」タスクは、AIとの相性がとても良い。
- ゼロから書くと半日 → AIの叩き台ありで35分に短縮
- 敬語の例文付きなので、新人がすぐ実践できる
- 自社ルールの追加とレビューを忘れなければ、十分実用レベル
「マニュアル作っておいて」と言われて困ったら、まずAIに叩き台を頼んでみてほしい。ゼロからの苦しみが嘘みたいに消える。